やってはいけない「業務の棚卸し」

給食厨房での業務改善のために、現在の「課題」を見つけなければなりません。論理的に業務改善を行うためには、明確にゴールを設定する必要があるからです。
私たちが見てきた、不適切な棚卸し方法を解説します。

書き出さない

ミーティングで話合って・・・というものです。紙面にも残しません。
こんな話合いでは、どういう訳か「私はこういう意識でこの作業をやっている」という話になりがちです。棚卸しで重要なのは「どんなつもりか」ではなく「何をやっているか」です。目の前の作業に追われている現場スタッフ間で、全体像についての合理的な話し合いは困難です。

スタッフに丸投げ

もう一つは、給食のスタッフ全員に自分の一日の流れを紙に書き出してもらう。というものです。提出された「流れ」を1ページにまとめれば、作業の工程表ができる・・・と考えたのだと思います。ですが、実際は書式もバラバラで現場の人間でも内容を理解できない有様でした。「作業をこなす能力」と「紙面に表現する能力」は全く別のスキルですので無理もありません。

加えて、個々に自分の主観で書いているため、しまいには「それは違う」「あなたこそ違う」と子どものケンカのようになり、どれが正しい全体像なのか、経営陣には伝わりませんでした。

自社でもできる!正しい「棚卸し」

棚卸し、とはそもそも何でしょう? 
ここにいう棚卸しとは 「可視化」です。第三者にも伝わる形で「図表」に表すことで、経営陣にも厨房業務の全体像が分かるようになります。
その手順を紹介しますので、実践される方は参考にしてみてください。

①観察

客観的な第三者視点で、時間軸ごとに改めて観察します。大切なワードは「改めて」と「客観的」の2つです。

  • 1人、多くとも2人で行う
  • 1スタッフ1ページで記入
  • 1スタッフの作業を追跡し、作業内容、所要時間を観察
  • メモ(自分にだけ分かれば良い)

②可視化

タテに「使用人員数」、ヨコに「30分区切りの時間」で、図表に書き込んでいきます。
小さな四角ひとつ一つの大きさは、そのまま「作業ボリューム」です。
作業員1名につき1ページでメモしていますので、図表中の「人員①」が1ページ目のメモの内容となります。

時間のかかる作業はヨコ長の長方形
短時間の軽い作業はタテ長の長方形
人数が必要な作業は大きなタテ長の長方形

というカタチに自然となります。


出来上がった図を見てみると、長方形(作業)の入っていない、空白があることが分かります。どんな作業場にも必ずあるのですが、これは、なにもしていない時間です。
もっと言えば、何もしていないのに時給が発生している時間です。

ここまで出来れば、見直すべき部分が見えてきましたね?

ようやく業務改善の方向性を明確に定めることができます。

③確認

当事務所にご依頼の場合は、作成した作業工程表の内容が現状と一致しているかどうかの最終確認を行っています。現場監督者に確認して頂き、内容に間違いがなければ経営陣に提出し、改善の方向性を再度協議させていただきます。