栄養士と調理師の対立

献立を作成し、調理員に対して衛生上の指導を行う栄養士(管理栄養士を含む)。決められた食材、調味料で、献立通りの調理を行う調理師。立場も考え方も違うこの両者は、多くの現場で対立しやすい関係にあります。対話が足りない、と言われることも多いのですが、対話が成り立たない人たちも現実には大勢います。

文句ばかりの現場

栄養士は調理作業が分からない。だから、こんな大変な献立を立てるんだ。これはある程度事実でしょう。「要望を言っても聞いてくれない」と文句を言ってばかりで、ムリな作業、ムダな作業をそのまま続けている。ということが多々あります。

聞いてくれないのは何故なのか? を考えて意見発信できる調理師はあまりいません。「この作業はキツイ」「この作業は時間がかかる」。そんな個人的な感想を述べられても、丸投げされた栄養士にしてみれば「そうですか」で終わってしまいます。

「なぜ、ダメなのか」「なぜ、できないのか」「その献立の目的はなにか?」「他の方法ではなぜダメなのか」という考え方が抜け落ちています。

栄養士と調理師の意見交換を見ていてありがちなのは、「意見」「案」として確立されていない「文句」の段階で感情的に口に出している、ということです。事実が伝わりません。関係のない話を持ち出したり「いつ誰が」「この前は」などの細かすぎる話を始めたり・・・
「言いたいことを言う」ことが目的になっていて、もはや話合いが成立していません。

これらを論理的に伝えられる人が1名いるだけで、意見交換がしやすくなります。

現場を見下す栄養士

介護士を見下す看護師、看護師を見下す医師・・・

見ていて非常にみっともない序列争いですが、あらゆる職場でみられます。「マウンティング」とも言いますね。
厨房ではなぜか、栄養士の方がエラい。という風になっています。資格難易度が高いからエラいのでしょうか? そんなことはありません。管理栄養士は偏差値の低い専門学校に行くだけで誰でも取得できる資格です。実務経験も必要ありません。調理師も同様です。それぞれ役割が違うだけの関係であって、そこに上下関係や序列はないはずです。重要なのは経験値です。

例えば「冷凍食品の導入」という要望を出すと「現場がラクしたいだけだから却下」・・・こんな栄養士が一定の割合でいます。

「なぜ作業負担を軽くすることがダメ」なのか甚だ疑問ですが、実際に「調理師からの提案に従うのが癪にさわる」という人もいました。

その要望を「実現するメリット」と「実現しないデメリット」を分けて考えなければなりませんが、相手の真意を一方的に決めつけ、感情で考えるような栄養士に合理的な答えを出せるはずがありません。

経営サイドとして勘違いしてはならないのは、栄養士は献立や栄養指導など「栄養」についての職業であって、マネジメントは素人、ということです。

厨房作業量の多寡は「献立内容」に支配されています。改善のヒントをいくつも見落としている可能性が大いにあります。